「日本の宗教界は新型コロナウイルスのワクチン接種をどう考えているか」を考える


korona




メールでお寺・法事とコロナウイルスについての質問をいただくことが多いので調べていたところ「宗教情報センター」というところの研究員の方が、各宗教・各宗派の声明とスタンスについてまとめたレポートがあったので転載します(情報は2021年10月6日のものです)




日本の宗教界は新型コロナウイルスのワクチン接種をどう考えているか


藤山みどり(宗教情報センター研究員)


日本では、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種は努力義務で、強制ではない。また、成分に過敏症の既往歴がある人などは接種できない。厚生労働省は、接種の強制や、接種していない人への差別をしないように注意を促している。だが経済界からの強い要請もあって、政府は2021年9月に、ワクチン接種や陰性証明の所有者について10月以降に段階的に行動制限を緩和する方針を発表した。


【海外の状況】
 

日本よりも新型コロナウイルス感染症の被害が大きい諸外国ではワクチン義務化が進んでいる。海外の宗教者はワクチン接種を「自分の身体・生命を守ること」「自分だけでなく他者の生命を守ること」「公衆衛生上必要、公益を守ること」などの理由で概ね推奨している(「海外の宗教界における新型コロナウイルスのワクチン接種に関する議論」参照)。宗教者が声明を発表することが多かったのは、ワクチンの含有成分が教義に反する懸念があったためでもある。総じて、たとえワクチンの含有成分が教義に反する場合でも生命保護を優先して接種を認める傾向がみられた。


  一神教では二進法的思考に陥りやすいのか明確な見解が多かったが、ロシア正教の円卓会議は、ワクチンへの不信感が強い国民感情を反映したのか「個人の選択の自由」との声明を発表した。また、教団中枢と地方とで見解が分かれるケースも多かった。地方に接種否定論者が多いのは保守性の表れなのだろうか。


 接種を奨励する宗教者や、さまざまな理由で接種を否定する宗教者はいるが、接種拒否を否定する論調はあまりみられなかった。バチカンは職員への接種義務化を批判されてトーンダウンし、ロシア正教のヴァラーム修道院(カレリア共和国)では修道士たちの接種拒否に遭って接種拒否者への修道院追放令を撤回せざるを得なかった。モスクワ総主教区対外教会関係局長が「接種拒否は罪」と拒否者を強く非難できたのは、政府の後ろ盾があってのことなのだろうか。  
 ただし、ローマ教皇フランシスコが接種拒絶者を「奇妙」と発言し、バチカンへの入国者への接種義務化した流れからは、感染症の拡大状況によってはカトリックも方向転換する可能性がある。
 イランでは、国際関係がワクチンへの見解にも現れた。最高指導者ハメネイ師は米英製ワクチンを否定したものの、感染増大という現実の前に微妙な留保が入った。
 宗教者や信者の反応は、日ごろ重視していることや懸念していることを浮きあがらせたものでもあった。


【日本の状況】
 

 日本の宗教界を見渡すと、神道、伝統仏教、新宗教を含めて、飲食物や人工妊娠中絶に厳しい制限を課すところはほとんどなく、ワクチン接種が教義に抵触する可能性がないためか、接種の是非は議論の対象になっていない。
 新型コロナウイルス感染症の終息と平常通りの活動再開をワクチン接種や治療薬開発に期待する声2や、ワクチン接種に肯定的な動きはいくつかみられた。2021年3月には、創価学会を支持母体とする公明党には、創価学会の座談会や訪問などの対面活動が東京都議選(2021年7月)や衆院選(2021年秋)の選挙活動に欠かせないため、選挙戦のためにワクチン接種を進めたい様子がうかがえた。
 途上国にワクチンを安定供給する国際的な仕組み「COVAX」への参加や支援は、池田大作創価学会インタナショナル会長(創価学会名誉会長)の名前で発表された「SGIの日」記念提言(2021年1月)や、立正佼成会とカトリックの在家運動体「聖エジディオ共同体」が発表した「アフリカのための共同アピール」(2021年6月)で呼びかけられた。
 立正佼成会(本部・東京都杉並区)や浄土宗大本山増上寺(東京都港区)は、教団施設を自治体の接種会場として提供した。浄土真宗本願寺派や真宗大谷派の宗務所では、職員のワクチン接種時に特別有給休暇制度を導入した。地域と密着した寺院では、パソコンやスマートフォンが苦手な高齢者のためにワクチン接種の予約代行をするところもあった5
 ワクチン接種が進んだ2021年秋には、接種を行事参加への条件とする寺院も出始めた。浄土宗大本山増上寺は、11月上旬に実施する檀信徒対象の五重相伝会(浄土宗の教えを5つの順序で伝える法会)の入行条件を、10月末までに2回のワクチン接種を終えていることとした。真言宗各派総大本山会は、2022年1月上旬に修する勧修寺流(金剛界)後七日御修法への出仕関係者に事前のワクチン接種を要望した7
 だが日本でも懸念が広がっていたワクチンの安全性や有効性、人々の不安をあおるような情報に関して、宗教界からの情報発信は少ない。そのなかで、錯綜する情報に戸惑う信者のために発したと思われる教団や教団関係者側のメッセージを集めてみた(宗派・教派設立順)。


◆天台宗
 

 天台宗の檀信徒向け教化紙『天台ジャーナル』(2021年3月1日号)のコラムでは、通常ならば使用可能まで何十年もかかるワクチンが1年足らずで使用できるようになったことに不安を覚えるのは無理もないと、ワクチン接種に躊躇する人の気持ちに理解を示している。副反応が心配なのだろうかと推察したコラム執筆者は、「副反応は出るが、さほど心配するほどではない」という英米で勤務する日本人医師や看護師の話やイスラエルでの副反応は0.2%台という数値を挙げながら、「感染を抑える効果を求めるか、安全性を第一とするか、難しい選択だが、日本はもとより世界のコロナ禍収束のためには一人でも多くの方の接種が望ましいのではないか」と結んでいる。


◆浄土真宗本願寺派
 

 浄土真宗本願寺派の門信徒向けの新聞『本願寺時報』(2021年1月10日号)には、「米ファイザー社のワクチンが95%有効と発表されていますが、本当に安全なのでしょうか。教えてください」という新型コロナウイルスのワクチンの安全性についての質問に対する「西本願寺医師の会」会員である上野富雄・川崎医科大学教授(門徒)の回答が掲載された8
 回答では、これまでアレルギー反応を起こした経験のある数名に血圧の急低下を伴うアナフィラキシー(類似超過敏反応)のような反応が見られたこと、この反応は今回のワクチンだけでなくインフルエンザワクチンでも報告があること、副作用は接種直後だけでなく、長期的に影響が出ることもあり得るので、安全に関しては絶対安心とは言い切れないこと、などを丁寧に説明している。情報を提示したうえで、「そうした危険性と予防効果を考えて打つかどうかを個人でも判断する必要があります」と自身による判断を促している。


◆大本
 

 大本では、2021年8月に京都府亀岡市で行われた大祭の挨拶で、出口紅教主がワクチンについて言及した。出口教主は北陸大学薬学部で東洋医学などを学び、亀岡市内数校の学校薬剤師を務めていた2001年に教主の後継者に選ばれた、医療の専門家でもある。「従来と異なり今回のワクチンはウイルスの遺伝情報の一部を使って作られ、治験が継続されるなか、緊急事態のための特例として承認されたもので、短期の副反応はある程度わかっているが、長期の影響への不安が拭えない」と懸念を示した。また、「接種はあくまでも強制するものでもされるものでもなく、本人の意思に従って判断するものとされるが、接種をしたくない人たちへの同調圧力、差別、行動制限を求めるような風潮を懸念している」と述べ、感染対策を徹底し、正しい食事と適度な運動、十分な睡眠、土、松、梅干しや梅肉エキスの力で免疫力を高めつつ、神に真剣に祈ることが大切だと教示した。
 ちなみに大本の2人の教祖のうちの1人である出口王仁三郎(聖師)は健康に関する教示も多く、「たいがいの病気は松と土と水さえあったらなおるものである」と述べている(ただし、水は井戸水に限り、土も大本の土のように粘りけのある土でなくてはならない)。


◆神慈秀明会~NPO法人秀明自然農法ネットワーク
 

 世界救世教から独立した神慈秀明会は、世界救世教の教祖・岡田茂吉の教えを忠実に受け継いでいる。岡田が説いた自然農法は「秀明自然農法」という名に変わったが、「浄霊」「美による感化」と並んで神慈秀明会が取り組んでいる3つの芸術活動のうちの1つである。
 神慈秀明会が2003年に設立した「NPO法人秀明自然農法ネットワーク(SNS)」は、自然農法の普及や環境保全などの取り組みを行っている。このNPO法人のサイトのトップページには「新着ブログ一覧」があり、ブログのタイトルをクリックすると閲覧できるようになっている。ここにタイトルが掲載されるのは、4つの「SNS公式ブログ」と3つの「生産者のブログ」である。2021年7月から9月に掲載されたタイトル13本(重複を除く)中2本以外は、北陸で秀明自然農法を実践している生産者の「晴耕雨書 農楽里日記」というブログであった。
 2021年7月5日付のブログでは、ワクチンの効能として「スパイクタンパク質を周りの人にまき散らす」「3年から5年かけて免疫機能が落ちてきて、いろんな病気にかかり易くなる」「生殖機能を攻撃されて、最悪不妊の原因になる」などを列挙し、「自然農法の食べ物にはワクチンで入れたものを出す効果がある」と自然農法を称賛している。
 7月17日付のタイトルは「今回の新型コロナ騒動詐欺とワクチンの正体」である。スペインの医療研究チームがファイザー製ワクチンの分析をして酸化グラフェンが99.99%以上とわかったという。ここから筆者は、下記のような疑問(一部抜粋)が解けたとし、「メディアはアルコールでこの酸化グラフェンが排泄されてコロナ騒動が治まるのを嫌って飲食店いじめをやっているとしか思えません」など、その答えも記している。
・なぜワクチンを打った人は血栓が出来るのか
・なぜワクチンを打った人の体に磁石がくっつくのか
・なぜ新型コロナ騒動は武漢から始まったのか
・なぜ緊急事態宣言は飲食店ばかり狙う打ちされアルコールが禁止なのか(原文ママ)
 7月22日付のブログ「ワクチンを打った後の解毒」では、ワクチンを接種してしまった人の対応法について記している。酸化グラフェンを体外に排泄するには「5-ALA」などが良い、日本酒、甘酒は「5-ALA」を多く含むので、「ワクチンを打った人にはぜひ、日本酒、お酒が苦手な人には甘酒を勧めたら良いと思います」と述べている14


◆幸福の科学


 「幸福の科学」の大川隆法総裁は、ウイルス感染には「憑依の原理と同じ原理が働く」ため、「とくに恐怖心の強いタイプの人は憑依されやすい」と法話で説いている15。そこで感染を防ぐために、明るく積極的な心や強い信仰心をもつことを勧めるほか、大川総裁の法力が込められた法話、書籍、楽曲、祈願などにはウイルスを撃墜する力があるとして、さまざまなものを紹介している。楽曲としては、大川総裁が作曲した「THE THUNDER (ザ・サンダー) -コロナウィルス撃退曲-」(CD)、祈願としては、「勇気の霊的ワクチン」である「コロナ・ワクチン副反応抑止祈願」などがある。
 この論調は幸福の科学出版発行の月刊誌『The Liberty』(2021年4月号)掲載の「コロナワクチンの幻想」などの特集でも確認できる。6830人の医者を対象に実施された調査では、ワクチンを「受けたくない」が30%(「受けたい」35%、「わからない」35%)で、接種しない理由は「安全性、有効性が十分に検証されていない」「有害事象(副作用)が怖い」だった1、米ファイザー元副社長であるマイケル・イードン博士は「危険極まりない」と公然と批判している、などワクチンへの疑念を紹介している。そのうえで、「コロナワクチンは当てにならない」「『オリゴ糖』を摂ればコロナは治る」などの専門家の意見に続いて、大川総裁の書籍や楽曲CDを市民や医療施設に届けたところ感染が収まった事例を紹介し、「コロナワクチンに期待できない今、信仰心を持つことで免疫力を高め、コロナを乗り越える重要性は増すばかりだ」と締めくくっている1。
 また、大川総裁が創立し、党総裁を務める幸福実現党は、ワクチン接種証明書(いわゆるワクチンパスポート)についても、①感染症対策の効果に疑念がある、②基本的人権が侵害される、③全体主義への道となる、などの理由で反対している。






ワクチンについての考え方は異なるが、それぞれが信者や人々のために真剣に考えてワクチンへの対処方法を述べている。真偽のほどがわからない情報が無数あるなかで、自身が正しいと思う情報を選びとり、それを信じていくしかないのだろう。その姿は、ある意味、宗教や信心と通じるものがある。
(参考)ワクチン開発と接種の背景ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 2019年12月に中国・湖北省武漢市で発生して1世界に広まった感染症(COVID-19)を引き起こす新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」は、2002年に中国・広東省から広まったSARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルス(SARS-CoV)の姉妹種である。
 このウイルスに抗するワクチン開発は緊急を要し、WHOや米国の食品医薬品局(FDA)は、通常と異なるワクチン開発を認めた。FDAはワクチンの有効性を判断する指標を通常の8割以上から50%以上へと緩和した。また、安全性については、接種後観察期間の中央値が2カ月間あることを1つの要件とした。ワクチンの実用化には通常5~10年以上かかるが、世界大流行のもと特例で緊急使用認可によって、2020年12月には米国ファイザー製のワクチン接種が世界で初めて英国で始まった。なお、FDAは新型コロナウイルスのワクチンとして初めてファイザー製を2021年8月23日に正式承認した(16歳以上対象)。
 日本では医薬品医療機器総合機構がワクチンの評価を検討した。安全性については、接種から少なくとも28 日間に発生した有害事象の収集が求められた25。海外製ワクチンは、国内でも日本人を対象に臨床試験が行われ、有効性と安全性を確認したうえで特例承認された。効果の持続性等を確認するため、2021年9月時点で臨床試験の一部は継続中である。予防接種法改正(2020年12月)により、健康被害が生じた場合には製薬企業ではなく政府が損害賠償を補償する契約でワクチンの供給を受け、日本では2021年2月から接種が始まった。
 日本で承認されたワクチンのうち、ファイザー(米国)とモデルナ(米国)はmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン、アストラゼネカ(英国)はウイルスベクターワクチンと呼ばれる。いずれも新しいタイプのワクチンで、ウイルスのたんぱく質をつくるもとになる遺伝情報の一部を注射し、この情報をもとにウイルスのたんぱく質の一部が作られ、それに対する抗体ができることでウイルスに対する免疫ができる。日本では10月4日時点で総人口の61.5%が2回の接種を終えている3。
 9月6日に厚生労働省は、国内で生産・流通される従来型ワクチンの供給を早ければ2022年初頭から受ける契約を結んだ31。変異株の出現により効力が低下しているとはいえ、特効薬がないなかで、ワクチン接種は感染抑止、重症化抑制の効果があるとされている。
※10月3日の新聞各社報道によると、政府は、米メルク製の新型コロナウイルス感染症の軽症者向け飲み薬を2021年内にも調達予定で協議を進めている。
【10月11日補追】曹洞宗が運営し、檀信徒会館として利用されている東京グランドホテル(東京都港区)も、港区のワクチン接種会場として提供された


(宗教情報センター 藤山みどり)




見やすいように一部太字にしています。アカデミックな文体なので少し難しいですが2021年10月時点の各宗派の見解が客観的にまとめられていています


曹洞宗に関しては、世間に対する公式的見解を専用に述べていなかったのか、言及されているのは蛍光ペンで強調している、グランドホテルがワクチン会場として提供されたという一文のみです






東光寺としては、曹洞宗からコロナウイルス初期に各寺院に対し「法要においてはマスクを着用し充分に留意すること」とあったので、基本的にはマスク着用を徹底しております。また、お盆やお彼岸のお参りに関しては、本堂にアルコール消毒器を新設し、体温を検査して消毒したうえで、「健康状態に不安のある方はお参りを無理せず」といった、一般団体にならうような形で対応しています


東光寺の本堂にスタンド一体型検温・消毒器が導入されました(TAKASYOU・HD-1000)



↓曹洞宗のコロナウイルスについての公式見解はこちらから更新されています


新型コロナウイルス感染対策について(SOTO-ZEN NET)

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