令和元年10月の山門掲示板「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪冴えて 涼しかりけり」
令和元年10月の東光寺山門掲示板です
春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪冴えて 涼しかりけり <道元禅師 傘松道詠集>
〔意訳〕春になれば花が咲き、夏にはほととぎすが鳴き、秋には月が美しく、冬には雪が降って身がひきしまる
曹洞宗を日本に伝えられ永平寺を拓かれた、道元禅師の傘松道詠集のなかの一句です。この歌は道元禅師が45歳から54歳にかけて、折にふれて詠まれた和歌60首を集めた『傘松道詠』におさめられているものであり、『本来面目』という題がつけられています
「春には桜の花夏のほとどきす秋の月冬は雪がつめたく冴えて四季はおのずとめぐる。思えばなんとすがすがしいことか。」
道元禅師が永平寺におられたとき、北陸の深山幽谷において日本の四季がはっきりと感じられていたのだと思います
永平寺においても、春には桜の花がきれいに咲いて、夏にはホトトギスの美しい声を聴き、秋は月の美しさ、冬は雪の降る姿
この移り変わる自然の姿は、時代や場所を超えて現在の私たちと同じように感じられていたのではないでしょうか
題名の『本来の面目』について、木来というのは本物の本という字、面目は本来の姿という意味です
この歌では季節おのおのがその本来の姿を現していると示されているのです
自然の美しさをありのまま、素直に感じる気持ちがそのまま仏道にも通じていてこの歌が禅を説かれています
道元禅師は修行僧、一般の方々分け隔てなく坐禅を広められました。自分自身の心や身体のとらわれから脱し、坐禅によって自分と世界という対立を離れた本来の自己の姿が現れてくる
このさとりの境地を移り変わる自然本来の美しさと重ねて「本来面目」と題されたのだと思います
秋田県にいて季節の移り変わりを感じるのは稲刈りです
9月の後半から田んぼにコンバインが入って、天に昇っていく稲がキレイに刈り取られたすがたですね
暑い夏が終わって「そろそろかなー」とお寺の暖房器具を準備して冬の寒さにそなえる姿
形を変えた田畑とともに鮮やかな色に葉の色を変える山々は格別なものですね
ちなみに道元禅師のこの歌は川端康成さんのノーベル文学賞記念講演でも取り上げられ「日本人の面目 」という題で詠まれたのでも有名です
川端康成さんも道元禅師のこの歌に日本人が感じる自然への敬いと日本人本来のこころを感じられたのでしょう
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